カテゴリー「SATETO・日清パワーステーション」の記事

2017/06/16

1988.6.16 日清パワーステーションLIVE

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2013/03/13

SATETO・日清パワーステーション

Fullsizerender_101

"SATETO-1988" ツアーには、"特別企画"と も言えるメニューがついて いた。通常のホール・コンサート ツアーの合間をぬって、名古屋のハートラン ドと、大阪のバナナ・ホー ルと、東京のパワー・ステーションで、ライヴハウ ス・コンサートが行なわれ たのだった。 「まだやったことのないこ とをやりたい」 拓郎のそんな希望の中に、ライヴハウスがあった。 今でこそコンサートには、 "段階"ができた。つまりライヴハウス→ホール→武道館、球場という段階だ。でも、拓郎は、そんな"段階" とは無縁だった。なにしろデビューして、いきなりと言っていいくらいすぐ、ホールだった。ジァンジァンとか、さそり座という小空間のライヴを体験してはいる。でも、当時は"ライヴハウス“という存在自体がなかった。東京のライヴハウスの草分けとも言えるロフトがオープンするのは、拓郎がメジャーになってからだ。つまり、強引な言い方をすれば、拓郎がメジャーになったことが、全国にライヴハウスを生んでいくという場面を作ったとも言えるのだ。それは、妙なたとえだが、王様が巷のまん中に、突然現われたようなものでもあった。 6月16日、パワー・ステーションでの拓郎は緊張していた。拓郎は、「どんなステージでも緊張する」と、よく Jo ロにする。でも、この日は特に激しく緊張しているよう だった。5万人を前にするのとは違う緊張が、至近距離 の客席にあったのだろう。青ざめた表情がひきつって見 え、無神経とも思える"拓郎コール"に、顔をゆがめた りもした。野外イベントでは恒例になり、"祭りの雄叫び" に聞こえる"拓郎コールも、ライヴハウス空間には不釣合とも言えた。目の前の拓郎。彼は、5万人の前と変わらぬパワーで歌い、そして、ここ数年のコンサートでは見たことのないような饒舌さで、近況について語った。 そんな姿は、"飽きてしまったスタイル“とは違う、コンサートの手ごたえを見つけているようにも見えた。
 
(吉田拓郎HISTORY 1970-1993)

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1988.6.16の日清パワーステーションの公演がFM東京にて1988.8.7 ON AIR。
 
曲目
 
冷たい雨が降っている
すなおになれば
リンゴ
眠れない夜
落陽
メドレー (イメージの詩~君去りし後~たどり着いたらいつも雨降り~春だったね~ジャスト・ア・RONIN~あの娘といい気分~元気です~あいつの部屋には男がいる~おろかなるひとり言~7月26日未明)

Ps01

 
アナ 拓郎さん、4年ぶりのライヴということでしたがいかがでしたか。
拓郎 いや、ホントに。ありがとうございました。
アナ 今までほんとに大きな所でやっていらした拓郎さんが、今回、そのライヴスポットで、手の届く距離でコンサートをなさろうとしたのは何か理由があるんですか。
拓郎 いやー、ま、あのたいしたアレはないんすけどね、ただとにかくコンサートツアーめんどくさくなって。でイベントみたいなのがなんかしゃらくさくなってきて。で、なんかやってない事をやりたいってのが。ライヴスポットってあんまりそのライヴスポットと呼ばれるようになったからはね、ま経験ないんですよね。東京では昔ジャンジャンて所に出てましたけど当時まだライヴスポットっていう感じじゃなかったですからね。そういう意味じゃライヴスポットっていう、呼ばれてる所にね、1回出てみたい。まぁ、ムリ言って。出てコケました。
アナ えぇ、はは。
拓郎 あんなに近いとは思わなかったです。
アナ ふふふ、ねぇ。今まで本当に大きな会場大きな会場とやってらしただけに、すごく新鮮さも、えーあったと思うんですけれども。
拓郎 そうです。やっぱ緊張します、あんなに近くに人がいると。
アナ 拓郎さんがですか。
拓郎 うん、なんか変な顔で歌えないとかね。なんかギターを弾いてる指が気になったりとかね。あの変な事がすごい気になってね、結構気が散ってましたね。
アナ お客様も、この距離で。最初にもお客さん言ってましたけど"拓郎さんの存在をこの距離で確認するんだ"っていう。それをきょうこの放送で皆さまも味わっていただけたら幸いだと思います。
拓郎 はい。
アナ えー客席に、アルフィーの坂崎幸之助さんがみえています。
坂崎 はい。どうも。
アナ 坂崎さん、やっぱりいらしていたんですね。
坂崎 もうねぇ、久しぶりですからね。あのーこの前に東京でやったんですよね。そん時僕行けなかったんで。うん、今日はすっげー楽しみにしてる。
アナ 拓郎さんにしては、本当に初めて、手が届く距離、ですけれどもそのへんは。
坂崎 こういうなんか、ライヴハウスみたいな感じの所ってのは、レコードでしか聴いた事がなかったんですよ。あの「ともだち」っていう
アルバムがあったんですけど。古い話ですけどね。あれがなんかそういう感じなんで。そういうなんかね、身近なね。あの、多分しゃべりも多くなるんじゃないかとあの人のことですから。うん、そういう期待もあるんですが。
拓郎 今いたの?
坂崎 いたんですよー。いやいやいや、正面に、どうぞ。はい!
アナ いかがでした?坂崎さん。
坂崎 いやいやいやいや、うーん。いや感激しました。もう、泣きそうですね。うん、ホントに素晴らしいですね。やっぱりあの、ずっとやっていただきたいですね。本人あんな事言ってますけどね。もうねぇうまいんですよ、ああやって人の気持ちを揺さぶりながらやるのが。まぁ"まだ次のツアー決まってない"とかなんか言ってましたけど。うん、絶対またやってくれると思います、拓郎さんのことですから、うん。
アナ きょう来てるお客さんの中で、"拓郎さん何やってても生きてることそのものがライヴだ”。
坂崎 そうですね。ホントにそう。あのー 、あの人がいりゃあいいんですよ。別に演出とかね、いらないんです。あの、みんなそう思ってると思うんですね拓郎さんのファンのかたがたね。なんかだって声が、全然衰えてないでしょ。うん、あの全盛期っつうか、いつが全盛だかわかんないんですけど、うん、全然変わってないんでね。うん、すごい安心しました。もっと老けちゃってるかというね、ちょっと不安があったんですけどね。ええ、大丈夫ですね。期待してますこれからも。
アナ 拓郎さん、坂崎さんああいうふうにおっしゃってますが。
拓郎 はいどうも。すいませんでした、坂崎さん(笑)
アナ ずっとやってほしいっていうのは、まぁみんなね。ええファンの方はみんな思ってる事だと思いますが。また拓郎さんは"俺は俺"ってお っしゃるんですか?(笑)
拓郎 そうですねぇ。まぁあの、やっぱりやりたい時にやるのが一番いいみたいですね。
アナ ええしかし、4年ぶり。この4年間で、いろいろご自分の中で変わったものとかがこのライヴで出ましたでしょうか。
拓郎 出てましたね。自分で確認しましたけどね。"ああ俺、変わったな"と思いました。
アナ どういうふうに。
拓郎 あのう、根がだいたい根本的にはすごいこう基本的には明るい男なんですよね。それが、一時ちょっと明るいくせにステージでなんかあんまり素直じやないっていう感じだったんだ。等身大じゃなかったんですよ。やっぱりツッパッてたり、ポーズもあったし。今度のステージは、そういう意味じゃまたあのお客さんには申し訳ないんですが、冷 たく突き放しましたけども。あの非常に僕としてはマイペースでした。で、所謂コンサート終わった時の疲労感というものも心地よかったです。
アナ あのとりあえずこのらいヴすぽっとが終わって、ええ次の事、まぁ坂崎さんも"またやってくれるよ”っておっしゃってましたけどお手本がありませんでしょ、拓郎さんの場合。
拓郎 そうですね、まぁあのニュー・ニュージックっていうふうに呼ばれてる中でね、やっぱ凡例ってのはあんまりなかったですね。
アナ ですよね。
拓郎 非常に不幸ですけどね。
アナ じゃあ次はどんな凡例を作っていらっしゃるんでしょうね。
拓郎 まぁあの音楽は要するに基本的にすごい好きなわけだから音楽から離れる事はできないわけでしょ。そうすっとやっ ぱりレコード作ったりコンサートやったりってことがメインになると思うんですけどね。まぁあの、また次レコーディングに入ることになってるし、それから夏はちょっと、ちょっとしたあの友達とやるジョイントみたいなのも決まってるらしいし。そういうのまた体験して、勉強します。
アナ とりあえずコンサート活動しばらくは絶対やり続けていただけそうですね。
拓郎 そうっすね。はい。
アナ まぁ約束は、拓郎さんの場合ないのかもしれませんかせ・・
拓郎 約束なんて破られるから美しい、っていう詞がありますが
アナ はい(笑)えーでも待つのも自由ですもんね、待ちましょう、はい。
拓郎 そうですね。
アナ ホントにきょうはこういう手の届く距離での素晴らしいライヴを ありがとうございました。
拓郎 ありがとうございました。
アナ 吉田拓郎さんでした。

西へ行く者は西へ進む えのきどいちろう
僕のデスクは壁に向って据えられていて、駐車違反の反則金納入用紙や映画の試写状や 伊勢丹の商品伝票(スラックスのすそあげ受け取り用)や色んな忘備メモなんかが、そこ にピンで止められている。そして、今、僕は 一枚の写真をそこに止めた。学生服を着た少年の写真である。
彼は「永遠に王にならない王子」である。 ギターを持っている。 文化祭か何かのステージで、何か歌ってい るのらしい。彼は痩せていて、活発そうで、歌うのに夢中になっている。
僕が「そこをどけ!」と怒鳴れば、たちまちひるんでしまって、それでもしばらくして何か言い返して来そうな、つまり彼はありふれた高校生だ。 情けないくらいに若く、思慮もなく、経験もない。頭のなかには妄想だけがあって、そのことを実現していく手だては見たところ見つかっていそうにない。彼が吉田拓郎なのである。ハーモニカ・ホルダーとフォーク・ギターという例のボブ・ディランスタイルでふらりと東京へ現われ、アンダー・グラウンド・ミュージックのシーンを自在に駈け廻り、そうかと思うと汽車に乗り、日本中のライブ・ハウスに独得のひねくれた節廻しを届かせ、ついにはヒット ・メーカーになってしまった男。吉田拓郎。吉田拓郎。彼は、しかし、「王」になってしまった。
僕は想像する。彼の遠く高い「王城」を。 僕はそこに行ってみる気はないが、たどり着く為には幾つもの企みが張りめぐらされているような場所。
彼はそこで絶望していると思う。
これは賭けてもいい。絶望しているのだ。 そして彼は正しい。その絶望には正当性があるから。それは常に彼の主張であり、行動 の規範でもあったことだ。彼は無為とー、延々と続き、個をひねりつぶそうとする膨大な退屈と闘っているのだ。彼以外の多くの人達はそのことに関して無頓着である。あるいは無神経である。ひとは個人でしかないというのに。個人が、個人であることを闘おうとし、そのことに意志的であれば、必ず彼は巨大な無為にまわりを取り囲まれることになる どんな楽天もそこには通用しない。無神経な者たちはたぶんごまかしてしまうのである。 自分自身の死に向きあった不安定な現在を 。 彼は「王城」の窓から市街を見おろし、つぶやいている筈である。「絶望が足りないんだ」と。
つまり、彼の城には何もありはしないのである。あるのはただ大画面のテレビ・モニターとビデオ・カセットとマスター・テープと乱雑にアンプにつながれたまま置かれているギターだけだ。 テレビ・モニターは馬鹿みたいに部屋を青く照らし、リモコンひとつで消してしまえるくだらなさゆえにそのまま放っておかれる。
まさか想像もしなかっただろう。僕の目の前で歌っているこの少年は。少年は自らを理由に駈けただけである。もちろん責任なんてない。
彼はいつしか「王城」にたて込もり、あるひとつの妄想にとらわれるようになった。王殺しー、殺してしまうのである。王の息の根を止めれば、彼は再び「永遠に王にならない王子」に戻れるかも知れない。そして今度は逃走するのである。全速力で、決まりのない道を。もう二度と人生の無為などにとらわれることのないめちゃくちゃな速さで、でたらめな道を。
あぁ、神様、僕の魂に無為にとらわれることのない速度をください。そして、彼の神様は彼の救いを!
今回、吉田拓郎がツアーを再開して、僕が想うのは以上のことだ。 僕には拓郎に向ける言葉がない。彼の王殺しが成功したのかどう か、君達は客席で目撃することになる。けれど、僕の目の前で歌っている少年に対してなら、本当は僕はこう言いたい。お前を信じて 闘ってる奴だっているんだぜ。実際のところ、 僕がそうだ。
(SATETO 1988ツアー・パンフより)
吉田拓郎は歌いたいときにか歌わない 村上 龍
 
吉田拓郎の歌を久しぶりに聞いて懐かしかった。彼の歌は何も変わっていない。「ウィ・アー・ザ・ワールド」でボブ・ディランのソロボーカルを聞いたときと同じ気分になった。ディランも何も変わっていなかった。変わらないというのは、とても難しいことだが、吉田拓郎やディランはそんなことを意識してやっているわけではない。たぶん変わりようがないのだと思う。本当は誰だって同じなのだが、奴隷根性の悲しい人間は社会的に変えられてしまうのだ。変わらない人は、そのために何かを犠牲にしているのだが、それを楽しんでもいるから悲しくないのだろう。吉田拓郎はきっと本当に歌いたいときにしか歌わない、わがままなシンガーだ。その彼が歌いだした。ファッショナブルなガキ達の反応が楽しみだ。
 

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