CMに見るDJとフォーク歌手総点検・拓郎編・72.7深夜放送ファン
クリープを入れないコーヒーなんて・・・じゃないけれど、CMのない放送なんて、なんとも、おもしろ味のないもんだね。妙に固い感じがしたりしてさ。でも、ほんの少し前までCMは番組の付録、日隠者扱いされていたんだ。ところが、最近ではスポンサー側の考え方も変ってきた。番組制作と同様に力を入れ、出演メンバーも、今一番の売れっ子タレントを起用する例が増えてきたんだ。
さて、そこで僕らのDJやフォーク・シンガーはどんなに活躍しているのか、謁べてみよう。
一曲八五万円の拓郎ちゃん?
フォーク界の旗手、拓郎ちゃんは、またCMソングでも抜群の才能を発揮している。拓郎ちゃんが本格的にCMに取り組んだのが昨年の夏。ナショナル・テクニックスの「僕の旅は小さな叫び」がそれ。作曲は「生きがい」等を作った渋谷毅氏。作詞が「青い三角定規」でおなじみの山川啓介氏。ジャズ・ピアニスト渋谷氏とフォークのシンガー&ソング・ライターの拓郎ちゃんの出合い。CMならではのことだ。ここでは拓郎ちゃん歌うばかりでなく、自からアドリブも入れているんだ。三小節目の、「このヘヤは・・・ぼくのうみへ」がアドリブの部分。
拓郎自身が持っている雰囲気をのびのびださせようと思って、アドリブを入れました」と制作者側は説明しているけど、それが好評を博してビッタリ決っている感じ。やはり、拓郎ちゃんというのは、フォークだけじゃなく、音楽の世界全般に卓越した才能を持っているんだね。自分の考えていること、思っていることを、素直に音に表わせる数少い音楽家といえるかも知れないよ。もっとも、拓郎ちゃん自身にいわせると、「あのアドリブは、その揚で、デッチ上げたんだよ。別にどうということはないね。コマソンって結構おもしろいと思った程度かなあ」とおっとりしている。
ところで、今流行っている「結婚しようよ」という曲は今までの拓郎節と一寸違う感じだね。例えば「どうしてこんなに悲しいんだろう」とか、「夏休み」なんかと較べてみれば、よくわかると思うけど、大変明るい曲になっている。そこに注目したのが、富士フィルム。パパママ路線からヤング路線へと宣伝方針を変え、拓郎ちゃんに作詞・作曲を依頼、でき上ったものが「Have a nice day」のフジカラーだ。
この辺のいきさつを、もう少し詳しく見よう。まず制作の初めの頃は三人の候補者がいた。村井邦彦氏と森田公一氏、それに拓郎ちゃん。本命はむしろ、拓郎ちゃんを除く二人だった。ところが、スポンサー側の強い要望と、オーディションの結果で、拓郎ちゃんが本命になった訳。いざ、オン・エアーしてみるとたちまち人気上昇。CM以上の効果を発揮している。CM以上というのは、「フジカラーの歌」じゃなく「Have a nice dayの歌」という風に広まっているからだ。「俺なんか、テープにバッチリョ」なんていうヤングはざらにいるし、「レコードにして!」という悲鳴に近い要望がスポンサーに殺到しているんだって。拓郎ちゃんのコンサートでも所望があるから、完全に拓郎ちゃんの歌になった感じだね。さて、このフィルムだけど、画面を見ながら作曲したんじゃないかと思える程、絵と音が一致している。しかし、実際は逆。撮影と作曲は全くバラバラに行われていた。撮影はグァム島で行われたし、拓郎ちゃんは東京で作曲していたという。
「あの曲は一時間もかからなかった。猫の連中とワイワイいってるうちにできちゃった。スポンサーの意向なんか気にしなかったのが、ワリと受けたみたい」とは拓郎ちゃんの弁。スポンサーが聞いたら、胆を冷さんばかりの言葉だけど、一時間もかからずに作ったのには恐れいるね。
ちなみに、このCMの作詞作曲料は一説によると、85万円とか。
君も作曲してみる?
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