FTBの帰国を前に・・・吉田拓郎君へ いったい俺は何を目ざしているのか・・・内田裕也
guts '72.4
FTBの帰国を前に・・・吉田拓郎君へ
いったい俺は何を目ざしているのか・・・内田裕也
拓郎クン。最近ロックの仲間からキミのことをよくきく。一つ、すごい人気。二つ、 女の子には一時のジュリー以上だ。三つ、渋谷公会堂を2日満員にした。 四つ、帰れといわれ、スグに 引っ込んだ。五つ、DJのリクエスト・カードが何千通。六つ、アルバムは 5万枚。 七つ、 鈴木ヒロミツがウワサする。等々である。フラワー・T・バンドの帰国(3月初め)を前に、今考えてることをキミに話してみたくなり筆をとったような次第です。
■ヒロミツが言うことを俺は全部信じているので、本当にすごい奴が現われた、 と素直に喜んでいるのです。 でも俺は一度も、君のステージを見たり、レコードを聞いたことがないのです。 未知の魅力! 素直に興味をもっています。 それ以上に、君のプロデュースをやっている人に興味があります。 たぶん、何のバックもなしにやってきたのだと思います。 バンザイ !
■きいてください。拓郎クン・・・ !
俺はエルヴィスにしびれて以来14年間、ロックの中で生きてきました。クィーンという音を聞いただけで、 体中の血が湧くのです。でも、折角見つけたタイガース君は プロダクションへ。かっこよくヨーロッパを駆けめぐれば、クリームやジミ ・ヘンに、ショック、ショックの連続で羽田に着いたら1文なし。 フラワーズを結成して、やっと何とかと思うと、麻生レミはアメリカへ。 今度は最初から世界大進出を夢みて、フラワー・T ・バンドを作り、希望通りカナダへ1年半。 その間に日本ではヘビー・ロックは終わり、日本語のフォークとロックだ! やはりGSはよかった。 反戦。
■コンサートを開いても客は集まらず、仕事場もなく、大借金。カミさんからも、ロックをやるなら4畳半に移りましょうといわれる有様。 その間にも大勢はフォークへ、フォークへと・・・。会場を借りに行っても、ロックですか? ダメ。 レコード会社もラジオも雑誌もフォークなら、イベント・メーカーも、フォークとの垣根を払って合同を・・・。日本中、フォーク フォーク! 六文銭、かまやつ君、岡林君、みんないい奴ばかり、個人的に話すと・・・。でも、本当に今の音楽に満足しているのかなあ・・・ ?
■きくところによると、君も昔は広島 で、GSにいたことがあるそうな。キャラバンにも出たんだろうな。連れ込み宿に泊まって3日間、フラワーズも出演しましたよ。君にヒッコメという連中は、妬いているのです。気にしないで。ディランもアメリカではミーハーに受けています。
■女の子が騒ぐのはみなフォーク、なんて話は嘘なんです。男の子の理屈より、純真な女の子の直感を信じます。 人気なんてものは、ほんの一時期です。それよりも不変の信念や人間らしさこそ、音楽の中の大せつなものでしょう。 俺はロックをやってよかった。 あまり陽の目を見れなかったが、そのかわり何かを得た。、喜びを!
■今さらデモの中には入れません。 ックという媒体を通して、みんなが平和に生きていけば、」それでいいのだ。
■拓郎クン、こう書いているうちに、俺は何か安らぎを感じている。一度君のステージを、後のほうから見に行きます。FTBのも見に来てください。 一体、俺は何を目ざしているのか?
■拓郎クンの真の成功を祈って、グチをこぼしてみました。5人のお客の前で歌うことを忘れない間は、結論がでなくても満足です・・・。 ガンバレ!
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