闘病中の吉田拓郎を励ました……桑田佳祐の伝説ライブパフォーマンスとは?
たとえば、アイドル時代の菊池桃子が「ロック始めました宣言」をした時には「ロックははじめるもんじゃねぇ」と噛みついたり、自作映画『稲村ジェーン』を酷評したビートたけしには「感性が低い」と口撃してみたり、オノ・ヨーコをクソババア呼ばわりしたり……枚挙に暇がありません。
といっても、アントニオ猪木を敬愛し、古舘伊知郎の話芸を「実況という名のラップ」と絶賛したプロレス好きな彼のこと。ルール無用に罵ることはせず、あくまでプロレス的な“節度ある闘争”を仕掛けたものです。
前者が「綺麗になってSoulを捨てて」とクサしながらも「Japanese Diana Ross」とわりかし賞賛多めな歌詞だったのに対し、後者は若干手厳しめな内容だったため、拓郎信者からの抗議もあったようです。
また、自分で曲をつくろうと思ったきっかけは、拓郎の手掛けたフジ・フイルムのCMソング『HAVE A NICE DAY』を聞いたからだとも語っており、敬愛しているのは明らかなのです。
桑田は1985年に発表した『吉田拓郎の唄』の中で、「唄えぬお前に誰が酔う」「一人男が死ぬ」「フォークソングのカス」といった歌詞を並べました。
しかも、もともとこの曲、仮タイトルが『死ね吉田拓郎』だったそう。
そんな拓郎を励ますため、桑田はサザンオールスターズのライブで久しく封印してきた『吉田拓郎の唄』の歌唱を決意。もちろん、必死に病魔と闘っている時に「カス」だの「死ぬ」だの罵るわけにはいきません。そこで桑田は、問題がありそうな箇所を以下のように改変したのです。
この時、桑田は47歳。すっかり角ばった部分が取れて、憧れや尊敬の気持ちを照れくさがらず、直球で表現できるようになったということなのでしょう。
曲の終了間際には、ステージに設置された大型のバックスクリーンに、拓郎の写真を映し出す演出も披露。
歌詞の中身も含めて少々クサい演出でしたが、そこには『吉田拓郎の唄』発表時から、いや、それよりもっと前から抱いていたのであろう桑田の変わらぬ「吉田拓郎・愛」がありありと見えました。
(こじへい)
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