田中秋夫が語るラジオ局が結集した〝伝説〟のコンサート
ラジオ広告費の減少によって民放ラジオが経営的に苦戦を強いられている。
4年前のことだ。日本民間放送連盟のラジオ委員会は、ラジオの持つ価値を改めて広く一般社会に訴求する取り組みとして「ラジオ再価値化プロジェクト」を発表し、民放ラジオ100局による特別番組を放送(2013年5月4、5日)したことがあった。
放送内容は、1985年6月15日に国際連合が提唱した「国際青年年」を記念して国際青年年推進協議会と民放ラジオ64社が主催し、東京・国立競技場で行った大規模なコンサート「ALL TOGETHER NOW BY LION」のライブ秘蔵音源を利用した番組だった。このコンサートは国際青年年のスローガンである「参加」「開発」「平和」を社会に広く知らしめることと共に、民放ラジオが結集し、そのパワーを誇示する目的で実施した。
観客動員数63000人という大規模なもので、当時のミュージックシーンに大きな衝撃を与えた、いわば〝伝説のコンサート〟だったと言っても過言ではないだろう。
当時、このコンサートを実施するに当たって、前年から民放連に特別プロジェクトチームが組織され、TBS、ニッポン放送、文化放送の在京ラジオ3局からスタッフが送りこまれた。私も「制作・演出部会」の一員として活動することになった。
しかし、このコンサートの最大の難関は日頃個別の音楽活動を続けてきたビッグアーチストたちが一堂に集まることに同意するか否かという問題であった。
彼らの多くは団塊世代に属し、「群れること」に本能的に強いアレルギーを示す傾向があった。私は各局のスタッフたちと各アーティストの事務所を訪ね、出演の了解をとりつけるべく折衝を重ねた。
アーティストたちはラジオに対しては親近感を示してくれていた。
彼ら全員が1960年代後半から始まった日本のポップスシーンにラジオが大きく貢献してきた事実を認識してくれていた。
その結果、当初は難色を示していたアーチストも次第に協力の意志を表明し始め、コンサートまでには多くの顔触れを揃えることが出来た。
23組のアーティストのセッションに6万人が熱狂
コンサート当日は広大なグラウンドに前夜からの突貫工事で前代未聞の8面の円形ステージが組まれた。何しろ史上最大のイベントである。スタッフの数、使用機材(マイク300本、アンプ200台)総費用などあらゆるものが記録ずくしであった。
参加したアーティストを出演順に紹介すると、吉田拓郎(兼総合司会)、オフコース、アルフィー, 鈴木雅之、アン・ルイス、山下久美子、白井貴子、財津和夫、ブレッド&バター、チェッカーズ、武田鉄矢、南こうせつ、イルカ、さだまさし、松任谷由実、はっぴいえんど(この日の為に15年ぶりの再結成)、坂本龍一、加藤和彦(2009年死去)、佐野元春、サザンオールスターズという23組のアーティストたち。現在でも第一線で活躍している豪華な顔ぶれだった。
これらの出演者たちがそれぞれセッションを組むという画期的なコンサートが展開され、6万人を超える観客たちを熱狂させた。
そして最後はこのコンサートの為に作られた小田和正作詞、吉田拓郎作曲、坂本龍一編曲のテーマ曲「ALL TOGETHER NOW」を出演者全員が大合唱するという感動的なシーンでフィナーレを迎えた。
このコンサートは今振り返っても日本の音楽史上に於いて空前絶後のものだったと思う。ラジオも活気があり、若者文化時代を作ってきた。私は、そんなラジオに関わり、こう言ったコンサートにも関わることが出来たことを今でも幸せだったと思っている。
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