カテゴリー「富澤一誠の「俺が言う 」」の記事

2017/02/15

富澤一誠の「俺が言う」 ノーベル文学賞受賞アーティスト<ボブ・ディラン>がいたから吉田拓郎が生まれ、そして現在のJポップ・シーンがあるのです! 富澤一誠

何をもって文学的と言うのか、は見解の相違によります。従って、ボブ・ディランの詞に文学性はあるのか、も見解のわかれるところです。
そんな前提に立って私が思うことは、これは日本においての話ですが、岡林信康、吉田拓郎、井上陽水、谷村新司、さだまさしなどのフォーク・シンガーたちは、フォークソングという表現手段がなかったとしたら”文学者“になっていたというか”小説“を書いていたと思います。おそらく彼らは青春時代の喜怒哀楽を小説という形を借りて表現して発散していたことでしょう。柴田翔の「されどわれらが日々」や庄司薫の「赤頭巾ちゃん気をつけて」などのように。
 
しかしながら、彼らはそうではなく音楽の世界に入ってしまいました。なぜかというと、自分の言いたいことを小説という表現方法ではなく、自分の言葉で、自分の曲にのせて、肉声で歌う”フォークソング“という表現手段を知ってしまったからです。
 
かつて“怒れる若者の季節”と呼ばれる時代がありました。60年代後半から70年代にかけて、ベトナム反戦、学園紛争、安保反対と嵐が吹き荒れた時代です。そしてそんな時代が生み出したのが“若者たちの英雄”である岡林信康、吉田拓郎であり、彼らが歌う“フォークソング”だったのです。当時の若者たちはそれまでの小説を読むかのような気持ちでフォークソングを貪るように聴くようになったのです。まさに<昔・文学、今・フォークソング>です。要は、フォークソングは文学である、ということです。
 
さてボブ・ディランの話ですが……。ディランがノーベル文学賞を受賞した際に吉田拓郎は「もし、あの時にボブ・ディランがいなかったら、と考える。ボブ・ディランがいたから今日があるような気もする。多くのことがそこから始まったと僕は思うのだ」というコメントを出しましたが、これは“ディラン”を“拓郎”に置き換えたら、そっくりそのまま日本の音楽業界にあてはまるのではないでしょうか。そう、吉田拓郎こそが“和製ボブ・ディラン”であり、拓郎がいなければ今のJポップ・シーンはありえないのです。
 その証拠に拓郎は大学生の頃に家出をしています。憧れていたディランの伝説を読んで、ディランは尊敬していたフォーク・シンガーのウディ・ガスリーに会うために放浪の旅に出た、ということを知り、自分も家出をすることでディランに少しでも近づこうと思ったのです。ディランの生き方は拓郎を強く刺激したのでしょう。
 
拓郎だけではなく、岡林も、陽水、谷村、さだもみんなディランの影響を受けています。それはベトナム反戦や公民権運動のムーブメントの中から、ディランが自分の意志を、自分の言葉で、自分の曲で、肉声を持って訴えていいのだというプロテスト・ソングを教えてくれたからです。その意味では、ディランズ・チルドレンと言っていい。そんなチルドレンを触発したディラン。ディランの歌はもともと文学青年だった彼らのDNAを刺激したのです。このことは、さだまさしの例を引くまでもないだろうが、さだもディランの文学賞受賞にあたって「あの人がいなかったら、僕らの歌を聴いてくれる人はいなかったかもしれない」というコメントを出しています。さだは今や小説家としても名を成している。「精霊流し」「解夏」「眉山」など数多くのベストセラーを出しているだけでなく、映画化もたくさんされ人気作家としても地位を獲得しているほどです。
 拓郎、さだをはじめ文学志向だった彼らを音楽の道に導いたディランの本質は文学にあるに違いない、と私は思う。ディランの詞が文学的なのか?はたまた文学性があるのか?その答えはまさに<風に吹かれて>です。
 
最後にこれだけは言っておきたいことがあります。ラブソングしか受け入れられなかった時代に、ディランはメッセージをこめたプロテスト・ソングを歌い世界中に影響を与えたということ。「風に吹かれて」のフレーズに「答えはすべて風の中」とあるように、直接的に伝えるのではなく自分で考えなさいというメッセージが魅力。また、通常は一音に一語を込めますが、メロディーより、言葉、思いが先行する。つまり、まずは詞ありきで、言葉がメロディーからこぼれてしまう“語る”ように歌うのがディランの特徴。それまでになかった言葉(言いたいこと)重視の歌は、日本でも岡林や拓郎などに影響を与え、“一音一語”だった日本の音楽を変える<字余りソング>を生み出していくのです。メッセージがメロディーからこぼれるなんて、それまでの日本ではありえなかったことで、Jポップの礎を作ったと言っても過言ではないでしょう。
ノーベル賞受賞で、これまでディランに興味を持っていなかった人も聴くようになり、音ってすごいぞ、と再認識されるきっかけとなれば幸いです。音楽で「時代は変わる」のか?答えは風の中です。

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2017/02/13

富澤一誠の「俺が言う 」 吉田拓郎の歌こそ私たちの人生のまさにテーマソングなのです!

吉田拓郎が登場した瞬間すさまじいばかりの歓声が地ひびきのように湧き起こりました。その歓声を聞きながら私のモードも一気にオンになりました。
 拓郎に対する歓声――正直に言って、この歓声こそが拓郎というアーティストの存在を独自のものにしている、と私は思っています。もちろん他のどのアーティストにもそれなりの歓声はあります。しかしながら、拓郎に対するそれとは根本的に“質”が違うのです。
 10月19日(水)、東京国際フォーラム・ホールAで〈吉田拓郎LIVE 2016〉が行われましたが、その“歓声”は健在でした。
 拓郎が登場して1曲目はいきなり「春だったね」から始まりました。2曲目は「やせっぽちのブルース」、3曲目は「マークⅡ」、そして4曲目が「落陽」。「落陽」が始まった瞬間、コンサートはいきなりアンコールのような盛りあがり、いうならのっけからコンサートはもう全力疾走です。このあたりの盛りあげかたがまさに拓郎の拓郎たる所以なのです。
 序盤から“歓声”を聞きながら私はこの歓声のことを考えていました。この歓声はどこから生まれてきているのかと……。それは拓郎の歌は私たちにとって単なるヒット曲でもなければ、よくある青春時代に流れていたBGMでもないということです。では何か?というと、私たちひとりひとりの人生におけるテーマソングではないか、ということです。拓郎の歌は、少なくとも私にとっては、私の人生を決定づけた歌です。そうです。私は拓郎の歌によって〈人生〉が変わってしまったのです。その意味においては、拓郎の歌こそが私の人生のまさにテーマソングなのです。
 もう40数年も前のことになりますが、私と違って、拓郎はフォークを歌うという行為によって、何かをつかもうとしているようでした。少なくとも私にはそう思えたのです。そのとき、拓郎こそ、私にとっての人生の指針ではないかと思いました。拓郎との出会いで、私は拓郎のように行動を起こさなければならないと決心しました。私の“青春の風”が拓郎と共鳴して反応を起こし騒いだのです。それからすぐに大学を中退しました。二十歳のことでした。つまり、私は拓郎に刺激を受け、触発され、跳んだということです。しかしながら、思い通りにはいきませんでした。情熱に突き動かされるがまま、歌手、作詞家、イベンター(コンサートの主催者)にチャレンジしましたが、いずれも失敗してしまいました。それでも、私はあきらめませんでした。何かをしたい、という思いは消え去ることがなかったからです。
 そんなある日のこと、アルバイトの帰りに、私は下北沢駅前にある書店に入りました。何か面白い本はないものかと物色していると、フォークの神様“岡林信康”特集という活字が目に飛び込んできたので手に取ると、それはフォーク専門の音楽誌『新譜ジャーナル』でした。さっそく買い求め、近くの喫茶店で岡林特集を読んでいると無性に腹が立ってきました。なんだこの記事は、こんなことしか書けないのか。こんなのだったら、私の方がよっぽどましだ。そんな思いが沸き上がってきました。これでもプロか?そう吐き捨てると、私はその場で思いのたけを文字にしていました。書き上げた論文にメッセージを添えて、『新譜ジャーナル』編集長宛に郵送しました。結果的に、この投稿が私に幸運を呼び込むことになるのです。
 投稿して一週間ほど経った頃「会いたい」という連絡が来ました。指定された日に編集部を訪ねると、T編集長から「音楽評論家としてやってみないか。やってみる気があるのだったら全面的にバック・アップする」という申し出がありました。チャンスだ、と思った。「ぜひやらせて下さい」――この一言で私の人生は決まったのです
 拓郎の歌によって私の人生が変わってしまったのです。これは私の個人的〈拓郎経験〉ですが、拓郎ファンにはひとりずつにこのような〈拓郎経験〉があるのです。だからこそ、拓郎の歌は単なるヒット曲ではなく、それぞれにとっては〈人生を変えた歌〉であり、つまるところ、自分の人生における〈テーマソング〉なのです。そんなそれぞれの熱い想いが凝縮されて爆発したのが拓郎に対する〈歓声〉なのであり、この熱い〈歓声〉があるかぎり吉田拓郎は不滅なのです。
 コンサートはMCを入れながら進んだがいい感じで聴くことができました。1曲目の「春だったね」から本編ラスト曲の「流星」まで18曲、そしてアンコールは「ある雨の日の情景」「WOO BABY」「悲しいのは」「人生を語らず」の4曲。どの曲を取っても思い入れは深く、また、じっくりと聴けたので充足感に満ちていました。それと特筆すべきはこの他にまさに〈スペシャル・ライブ〉があったということです。9曲目「ジャスト・ア・RONIN」10曲目「いつでも」を歌い終わった後、拓郎はボブ・ディランの話をしてからなんと「風に吹かれて」をギターの弾き語りで歌ったのです。ディランがノーベル文学賞を受賞して拓郎が何と言うのか?固唾を飲んで見守っているタイムリーな時期に遭遇できるとはラッキー以外の何物でもありません。受賞に関しては直接語ることはありませんでしたが、「風に吹かれて」をフルコーラスで歌ったことにディランに対する拓郎のリスペクトを感じないではいられませんでした。

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