映画「恋妻家宮本」 遊川和彦監督に聞く
若い頃から映画監督を目指していて「35年かかってやっと願いがかなった」という売れっ子脚本家の遊川和彦(61)第1回監督作「恋妻家宮本(こいさいかみやもと)」(東宝配給)が28日から、TOHOシネマズ梅田・同なんばで公開される。「俺しか撮れない映画」という思いを遊川監督に聞いた。
遊川監督は広島大学卒業後上京。役者志望で無名塾の試験を受けたことがあるが、一時映画学校に通いながらテレビ製作会社に入りディレクターに。その流れの中で脚本家になった。「本当にやりたかったのは映画監督だったが、その後脚本家のレールを突っ走り、気がついたら60代に。今回、35年かかってやっとその運に恵まれた」
当初は重松清の原作「ファミレス」の映画化にあたって、脚本を依頼されたという。「面白い小説だったが、重松さんに俺流の脚色を了承していただいて書いているうちに、これはほかの監督に渡して説明するのが難しいし、ひいては僕自身監督するのが一番いいと思った。でも自分からは言い出せない…」
そこへプロデューサー氏から「どうせなら監督もしませんか」という声がかかった。「待ってました!」である。「50代の夫婦の話で、主演は阿部寛さんに決まっていた。その奥さん役にドラマで何度か一緒に仕事をした天海祐希さんにお願いしOKの返事をもらって、それで映画が成立すると思った」
これまで「家政婦のミタ」「女王の教室」など高視聴率と同時に話題のドラマが多く、業界に名をなしたが、そのうち「現場に声を出す脚本家」としてうるさがられたこともある。「僕は普通のことを言っているだけだと思っていたが、根が演出家志望だけに、垣根を超えていたのかもしれない。本音は自分の書いたドラマはそれなりの責任を持たなくてはいけないという思いだった」と振り返る。
「恋妻家-」は一人息子が自立し家を出たことで、夫婦が2人だけの生活に戻り、妻が離婚届にはんこを押して持っていたことが引き金になって家庭騒動に発展する。「2人がどうやって相手を理解し、元に戻ることができるか。妻は永遠の謎だと思ってはいるが、夫はそれをどう分かろうとするかが大事。妻も同じでただ正しいことよりも、優しいことを選んでほしい。それが言いたかった」
「恋妻家」とは遊川監督の造語で「スタッフと話していて出て来た言葉。愛妻家にはなれなくても、恋妻家にはなれると思う。そんなテーマをタイトルに込めている」。若いころから好きだったという吉田拓郎の「今日までそして明日から」をフィーチャーした場面は映画の見どころになっている。「次回作は?」という問いに「さて…」と、笑みがこぼれた。
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