釈放翌日のライブにたくろうの強さと才能を見た 証言者久保利英明(弁護士)
釈放翌日のライブにたくろうの強さと才能を見た 証言者久保利英明(弁護士)
弁護士になって3年めのとき だったと思うが、CBSソニーの 大賀さんから相談があり、拓郎が どんな人間なのか、どんなアー テイストなのか知らないまま、弁護を引き受けることにした。後に社長になる松尾さんとすぐに金沢に飛んで行って接見すると「オレはやっていない」と拓郎は全面否定した。 だが、拓郎のそれまでのマスコミ嫌いに対する意趣返しか、マスメディアは、ろくに取材もせずに あることないこと書き立てた。憶測で記事を書いたのだ。テレビでは文化人と称する人間が、裏も取らずに雑誌の記事を鵜呑みにして声を張り上げる。あたかも拓郎が女性の敵であるかのような表現で拓郎批判を展開した。 そもそも文化人と称する人間が存在するのは日本だけなのだが、事実を究明して発言しようとする姿勢すらなかった。軽佻浮薄で時流に会わせて発言する。もうメディアスクラムのような感じで あった。拓郎は「見出し人間」と 呼んだが、言い得て妙であった。 しかし、マスコミや世間の喧噪とは裏腹に、我々の弁護活動により警察や検事はいち早くこの事件が、女子大生の狂言であることを見抜いていた。実態のない事件であることに気づいていたようだった。10日間の拘留のところを8日間で釈放した。事件が事実なら拘留期間が延びることはあっても短くなることは絶対にありえない。よく調べもせずに女子大生の 言葉を信じ、逮捕したのがまずかったというような思いがあったようで、釈放が決まると担当刑事がサインをねだる始末であった。 拓郎は釈放された翌日、逮捕前から予定されていた神田共立講堂の舞台に立っていた。『今日までそして明日から』を披露するのだが「わたしは今日まで生きてみました…♪」と歌いはじめると、拓郎を信じるファンから万雷の拍手が沸き起こった。そのとき、超 一流アーティストだけが放つオー ラを、拓郎に見た思いがした。
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