「ジャケットイラストは音楽への恩返し」江口寿史の最新イラスト集・高校時代は拓郎さんになりたかったんです。音楽をやりたいというよりも(笑)
「ジャケットイラストは音楽への恩返し」江口寿史の最新イラスト集・高校時代は拓郎さんになりたかったんです。音楽をやりたいというよりも(笑)
【本書には吉田拓郎さんのアルバムのために江口さんが描いたイラストが収録されているほか、吉田さん本人からの特別寄稿もある。江口さんは高校時代に抱いた夢をかなえたのだ。】
レコードからCDへ。そしてサブスクが主流になった今でも、音楽にアートワークは欠かせない。漫画家でありイラストレーターとしても人気の高い江口寿史さんの最新イラスト集『RECORD』は、江口さんがCDジャケットのために描いた作品だけを集めた豪華な1冊だ。
「前からこういう作品集を出したかったんです。本っていうか、レコジャケサイズのイラストが製本されずにケースに入っていて、ブックレットがついているというもの。持つと重いんですよ」
LPレコードのサイズのイラストが29点。ブックレットには、自作解説に加え、銀杏BOYZの峯田和伸さんとの対談が収録されている。江口さんの音楽への思い入れの深さがうかがえる内容だ。
「小学生のときから音楽はずっと好きですね。ルーツは加山雄三さん。加山雄三さんって、“弾厚作”っていう名前で詞も曲もつくっていてかっこよかったんですよ」
小学5年生の頃には、加山さんの新曲をクラスの友人と競って覚えていたそうだ。その後、グループサウンズを聴くようになり、細野晴臣、松本隆らが参加した伝説のバンド、「はっぴいえんど」などを聴くように。一方、レコードジャケットで印象に残っているのは、吉田拓郎の『元気です。』だという。
「高1だったかな。吉田拓郎さんがすごく好きになったんです。少ない小遣いをやりくりしてレコードが出るたびに買っていたんですけど、なかでも『元気です。』は印象的でした。粒子の粗いモノクロの画面に拓郎さんの横顔がジャケットいっぱいに写っていた。しかも中に拓郎さんの手書きの文章が入っていて、それがまたとてもいいんです。今回の本の僕のあとがきは、それに対する返答です。何十年もたって、やっと『ありがとう』って言えました」
「高校時代は拓郎さんになりたかったんです。音楽をやりたいというよりも(笑)。自分で曲を作ってみたりもしたんですけど、音楽の才能ないわって自分で思って、消去法で漫画を描き始めた。だから今でもミュージシャンに憧れがありますね」
漫画家としてデビューを果たしたのは21歳のとき。その頃から現在まで、絵を描くとき、つねにそこには音楽が流れていた。
「音楽にはずっと助けられています。だから、CDジャケットのイラストを頼まれると、恩返しという感覚で描いています。音を聴いてから引き受けるかどうかを決めるので、イラストを描いた方たちは好きなアーティストたち。好きじゃないと描けないですね」
最後に最近のお気に入りのアーティストを聞いてみた。
「あいみょんですね。下の娘がいま高3なんですけど、一昨年くらいにあいみょんがいいって言ってたんですよ。そのときはふぅん、って感じだったんですけど、昨年末に聴いてみたらハマっちゃって(笑)。次女に謝りました。音楽はもちろん、彼女のファッションにも興味があります。最近若い子でよく見る、だらっとした服を着こなしてるじゃないですか。あのフォルムって、僕が描いたことのないフォルムなんですよね。野暮ったさぎりぎりで、すごくかわいい。描いてみたいですね」
江口さんの言葉に熱がこもった。江口さんが描くあいみょんをぜひ見てみたい!
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