ボブ・ディランの映画「ノー・ディレクション・ホーム」・ 田家秀樹ブログ
ボブ・ディランの映画「ノー・ディレクション・ホーム」・ 田家秀樹ブログ
ずい分前に公開された映画ですね。2005年かな2006年か。でも、NHKが数年前に放送してくれて、それを録画してました。今までそのままになったた。なぜかというと長いから。3時間半。なかなか家でじっくり見る時間はありません。
今回のインフル騒ぎで唯一良かった、というか、多少なりとも意味があったとしたら、この映画を見たことかもしれません。一回に見なくても何日間かに分けられました。普通は、分けると時間が経ってしまって、その前を忘れてしまったりします。
監督はマーチンスコ・セッシ・。あの「タクシードライバー」の監督さん。デイランと年代がそんなに変わらない人。彼が10時間に及ぶインタビューと未公開映像をまとめたドキュメンタリー。面白かったです。
彼のデビュー前の話から67年まで。フォークシーンに登場してフォークロックに転身してフォークファンからブーイングされていくという過程での彼の葛藤や逡巡。60年代という時代と音楽という意味でもよく出来てるなあと思いました。
と言っても、基本はかなり前に公開されていた映画「Don’t Look Back」の時の映像が主体でしたから、エピソード的に新しいという感じはしなかったですけどじはしなかったですけど、今のジョーンバエズが出ていたり、当時のミュージシャンの姿やコメントが的確に挿入されていたり、時間軸がもう一つあったのがさすがでした。
「Don’t Look Back」というのは、彼がエレキギターを持ってフォークファンからブーイングされたり罵倒されたりした時代のヨーロッパツアーのドキュメンタリーだったんですね。その時のイギリスのメデイアとのやりとりがリアルだった記憶があります。そういうシーンも効果的でした。
ただ、その時代のことは、もう答えが出てる感じもしてるんで、後追い感は否めませんでしたけど。むしろ、その後のデイランを知りたいという気もしました。でも、当時を知らない音楽ファン、カリスマとしてしか見てない世代の人には見て欲しいという映画ですね。
みんな若い時があった、生意気で身の程知らずと言われながら自分であろうとする。そういうデイランの姿を見ることが出来ます。音楽もふんだんに使われてますし。マーチンスコ・セッシさんは音楽のセンスがシャープなんだなと思わせてくれます。
何で今そのことを書いてるかと言うと、今週の拓郎さんの放送で、70年代のテレビ拒否のこととか、メデイアとの緊張した関係についてしゃべってたんですね。日本でそういう姿勢を譲らなかったのも拓郎さんでしょう。
マーチンスコ・セッシさんがディランを撮ったように、拓郎さんを今だからきちんと記録するという監督さんとかいないのかなあと思ったりしたわけです。僕も何冊か書きましたけど、到底、力及ばずでした。彼も不本意でしょう。
彼が、今のラジオで今まで話してないことをあれだけ話してるのも、もう誰も当てにしない。自分の最後は自分で語る、ということなんでしょうし。誰か、映画監督でもドキュメンタリー作家でもいいんですが、あの番組の発言だけで作品を作らないかなあと思ったりしてます。
ここ何回か、拓郎さん、何かを決断してるな、と思わせるんですよね。今度のツアーもそういう意味では最後の機会になるんでしょうし。出でよ、日本のマーチンスコ・セッシという感じでしょうか。
というわけで、お聞きになったことのない方、いらっしゃらないでしょうけど、ディランの「ライク・ア・ローリングストーン」を。「ノー・ディレクション・ホーム」というのはその中の歌詞の一節です。じゃ、おやすみなさい。明日は東京も雪だそうです。
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