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2016/11/12

たくろうパック② / 伊藤友治


略 (拓郎プロフィール)
 
■吉田拓郎か、別のフォーク歌手か?
桝田は前々から吉田拓郎の存在を知っていた。 「広島のフォーク村に、ちょっと面白い歌
手がいるのよ」 湯川れい子のひと言がきっかけになった。まだ売れていないフォークシンガーの拓郎が「古い船を~」 のアルバムを出していることを知った。
「拓郎の歌は七·五調の定型があり、やたらに長いんです。字余りソングの草分け的なシンガー·ソング ライターですね。私にはそれが画期的なことのように思えました。また彼には独特のカリスマ性がありました。彼の曲がかかると、アッと言う間に拓郎ワールドが出来上がってしまう。そんなフォーク歌手はいませんでした」
拓郎に対する桝田の評価はすこぶる高い。しかし、実際のところは「木曜パック」のパーソナリティ に起用してみたいと思う別のフォーク歌手がいた。関西を中心に活動していた加川良である。
 
略(加川良プロフィール)
吉田拓郎か加川良か。桝田は思案に暮れた。歌や曲はともかく二人がどんな喋りをするのか、自分の目と耳で確かめてみるしかない。まず拓郎のライブ公演に行った。どの歌も字余りソングばかりで面白いと思った。特に弾き語りの合間に喋る話が爆笑ものだった。これじゃ、まるでフォーク漫談じゃないか。そう思えるほど楽しめた。それに対し、加川の喋りは面白味に欠けた。下手ではないにしろ、上手いと言えるほどではない。結論は出た。あとは
拓郎と出演条件を巡る交渉次第である。
■出演(起用)の条件
実際に拓郎さんに会ってみて、桝田さんはどういう印象を持たれたのですか?私は桝田の語る「拓郎論」に興味津々だった。矢継ぎ早に質問を繰り出した。
「拓郎は私より2歳年下です。自分の弟のようなものなんですが、器の大きな人物だなぁ、というのが第1印象でした。しかし、主張すべきところははっきりと主張する。その半面、シャイで恥ずかしがり屋な面も持ち合わせている。この男となら一緒に番組をやって行けると思いました」
出演の条件を巡っては、どんなやり取りをされたましたか?
「まず拓郎は、こんな風な言い方をしました」桝田はその時に拓郎と交わしたやり取りを再現してくれた。
[拓郎] 「やってみたいとは思いますが、TBSという会社の企画に当て嵌められるのは僕にとって大変きついんです。それは、どうなんですか?」
[桝田]  「毎週、放送は2時間ある。そのうち1時間半は君にやる。君の好きなようにやってもらって構わない。何を、どう喋ろうが君の自由だ。その代わり残る30分だけは僕によこしてくれ」
[拓郎]  「わかりました」
[桝田] 「もう一つ、僕の方から条件がある。
番組の中でかける曲は全て僕が選ぶ。君には口を出させない」
[拓郎]  「それもわかりました。桝田さんの条件に従います」
[桝田] 「最後に確認だけど、君は番組で何をやっても構わないが、ラジオは情報を伝えるものだ。そのことは絶対に忘れないでくれ」
桝田の再現するやり取りの中で、気になる箇所が1か所だけあった。「30分だけは僕によこせ」という件がありました。それは、どういう意味ですか?
彼は苦笑いしながら「よくぞ聞いてくれた」という表情になった。「当時のTBSには東大や一橋、早稲田、慶應など一流大学出のインテリがゴロゴロいました。確かにみな勉強家で博識なんです。私は学習院大学を卒業したのですが、先輩達からすれば、頭の悪い新米にしか見えなかったんでしょうね。
「お前はマルクスの資本論を読んだことがあるのか」、「もっと勉強しろ」と散々しごかれました。それで自分なりにテーマを見付けようと思い、沖縄問題に取り組むようになったのです。自分の担当する「パック』では、 30分だけ自分のテーマについて放送しようと考えていました」
 

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