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2006/12/30

吉田拓郎90年代へ・・・・・。・パチパチ読本 1990年 No.1(5)

吉田拓郎90年代へ・・・・・。・パチパチ読本 1990年 No.1(5)

●80年代のメイン・テーマって何だったんだと思います?
吉田 それは、僕にはテーマはなかったよ。きっと。 僕のテーマは70年代で全部終わった。テーマにしたことはやり尽くしてて、80年代に入る頃からテーマとかっていうものは、なくなってるんだよね。たぶん90年代、21世紀というか、そこまでは生きていないかもしれないけど、テーマやテーマみたいなもの、目標とか、そういうものをかかげることはないと思うけどね。僕は吉田拓郎っていう人を外から見るのがすごい好きなんだけど、第三者的に吉田拓郎っていう人を見た時に、もう、拓郎さんにはそういうことをさせたくないという気がしてるのね。拓郎さんは好きにやんなさいっていう、一人の拓郎ファンとしてあなたにもうテーマは似合わないって言ってあげたいくらいの気分だから、今。それはたぶん80年代を迎える頃からテーマはいらない。好きにやりぁいいじゃないっていう感じが強いなぁ。80年代は80年代でテーマ持ってた人は持ってると思うんだ。それは、きっと、僕以外の人でしょう。少なくとも。
●それは空白ということでもないわけでしょ。
吉田 空白ねぇ。でも、現実に生きてるわけだし、少しは動いてるわけだから、空白とは言えないよね。 僕のように、テーマを持たない以上は、心の底で何かハプニングを待っている感じなんだよね。それこそリクルートの「人間なんて」じゃないけど、あれはハプニングだよ、僕にとっちゃ。
●85年につま恋でアルフィーとか浜田省吾とかを集めて3回目のオールナイト・イベントをやったのは、自分でハプニングを作った。
吉田 そうです。間違いないですよ。
●あの年は、尾崎が大阪球場やったりした年で、転換点としては象徴的な年だった。
吉田 うん。ただ、僕は80年代を生きたって意識が全然ないから、わかんないけど、アルフィーとか。 あいつらあるんじゃないの。80年代だったんじゃない。70年代ないと思うよ。
●85年以降、コンピューターと取り組んでたでしょう。今度のLPで、それが形になってると思う。
吉田 できたね。まぁ、これで完成されたから、もういいよ。機械片づけようかと思うくらいだから (笑) おそらく打ち込みは全て知り尽くしてるね。 音楽に関していえば、コンピューター音楽のいけるところいけないところいい所と悪い所とか、だいたい把握したから、つきあってはいくだろうけど、深くつきあいはしないかもしれないな。知っていて損はないし、知らないのはまずいよやっぱ。今後、音楽作る時に参考にはなると思うよ。
●そういう意味で客観的に見て、80年代の音楽っていうのは、どう変わったという。
吉田 ここ10年は、とにかく音楽のジャンルが広まってきたというのがあるよね。デビューして、成功した人の見てると、バンドなんだけど、キャラクターが違うよね。ソリストはあんまり変わんないなと思うけど、バンドはいろんな音楽をめざしてるなっていうのは、気持ちいいことだよ。素晴らしいと思うし。だから、音楽の底辺が広がっていくということでは、80年代ってすごくいい時代だったんじゃない。 70年代って、フォーク、これしかないとか(笑)  そういう意固地なものがないから非常にいいと思うし。音楽をめざすっていうことからすると、80年代ってすごい財産だったんじゃないのかな、70年代は、まぁ、創成期だから、いろんな人が苦労して作りあげたけど、それはそれで一応、糸口は作ったということではあるけれど、80年代にそれは本当に開花してるんじゃない。非常にうまく。底辺は広がってるよね。ただ、イカ天なんかみてると、そうかなと思う時あるけどね。でも、それこそレベッカやTMや、 興味持って見てる人たちの音楽ってしっかりしてるし、方向もしっかりしてるでしょ。やってることもしっかりしてるし。それでいて違う音楽じゃない。 そこがいいよね。それはうれしいもんね。音楽は1個じゃないんだからっていうのは、ずっと言ってることだしね。いろんな音楽があって、その中でファンは好きなものを選べばいいってことだから。僕だってファンの頃はそうだったんだからね。70年代みたいに。音楽はこうじゃなきゃっていうのは息苦しくて。(笑) あの想いをしないで済むっていうのは幸せじゃないかと思うよ。
●で、そういう80年代を経て、90年代をこういうふうに生きたいという・・・。
吉田 そうですねぇ。まぁ、僕はそうは思ってなかったけど、結果的に80年代の10年間、あっというまに過ぎちゃって、何かダラダラしながらあっというまに過ぎちゃって、でも80年代に、吉田拓郎っていう人は、やっぱりいたなと思う。消えるかなとは思ってたんだけど、なんか、いた。(笑)
●消えると思った・・・。
吉田 うん。だってめまぐるしかったからね。この80年代入る頃っていうのは、たぶんいろんなもの追い越していって、70年代にあったことを全部カキ消していくだろうと思ったのね。あっというまに、だから70年代に生きた奴らってほとんどみんな終っちゃうっていう。忘れられちゃうと思ったよ。過去になると。で、イメージとして、70年代に起きたことって、過去の出来事にされやすいものなんだ。どっちかっていうと。学生運動にしても、さっきの話じゃないけど、死語になっちゃいそうなことなんだけど。でも、吉田拓郎っていう人は、いたような気がするんだよね。それは、素直に喜んで、若い人たちが好むと好まざるにかかわらず、いるぞっていってやろうと、90年代もとりあえずいようと思うな。 いるってことは、結構、王道だと思ったんだね。
●90年代の夢って聞かれたらどうします?
吉田 音楽的な?
●音楽も、プライベートも含めて。
吉田 それは・・・2人の子持ちになってることでしょうね。なんとしても 2人ぐらいは子供がいて、パパおかえりって言われる。あれじゃないかな。(笑)  雰囲気的にね。仕事から疲れて帰ってきて、パパおかえりだよ。(笑) それがないと、詩が浮かばない。 (笑)
●ツアーのアンコールでも最後に歌ってきたけど、 アルバムの最後の「俺を許してくれ」っていうタイトルの曲がありますよね。
吉田 うん。
●あの"許してくれ"というニュアンスというのは
吉田 だいたい"申し訳ないっていう人生"っていう感じがあるんだよね。僕の中に、すまんっていうのが。わがままを通すこととか意地をはったりすることとか、自分をまげないで生きたいっていう願望とか、だいたい人の犠牲の上に立ってるよ。誰かを犠牲にしたり、踏み台にしてることは間違いないわけ、ただ、それは、やっぱり僕の生き方として、その場でゴメン、俺こういうことしたいからゴメンなっていうわけにいかないのよ。だいぶ月日がたってからあん時ゴメンねってパターンだから。そうすると、いやあ勘弁っていうのが一杯あるわけ。さっき言った70年代は悔いがないくらいやることをやったわけで、結構、踏み台にしてるんだよ、いろんなことを。で、今、言えるんですよ。すごく今日の話は王道で終わりたいんだけど。王道つき抜けるためには、やっぱり犠牲がいる。わがまま通すためにはやむをえないですよね。そのことはもう、すまんっていうしかない。正直言って年齢ですよ。こういうことを言えるようになったっていう。カドが取れて、自分の中でね。本当のことが話せるようになってるって気がするの。
●今度のツアーで、70年代のなつかしい古い曲をやってたでしょ。
吉田 それはね、ミック・ジャガーがインタビューで、ツアーやるたんびに選曲で苦しむって言ってたのね。わかる、それはって思って。(笑) 俺、ドメスティックだけど、わかる。選曲つらいわ。(笑) 今度、何歌えばいいのって、歌う方は、僕としてはアキてるわけ。全部古い曲は、20年やってると、数が多すぎて本気で悩むよね。古い曲をやった方がいいのか、新しい曲がいいのか。で、今回だけは、思い切りなつかしがって、それから90年代にいこう。(笑) 思ってたより楽しくできた感じはするよ。
● 90年代に"いる"イメージってあるわけですか。
吉田 今日は、長い話になったけど、アマチュアの頃から音楽やってたわけでしょ。他に能力がなくて、音楽に多少の能力があった。何度か音楽を捨てようと思ったし、音楽はいらないとも思ったけど、音楽は避けて通れないですよね。だから、何をやるかわからないし、他の世界に飛び込んでいくかもしれないけど、音楽を避けて他のことをやろうっていう意識は、もう絶対になくなるだろうね。

吉田拓郎の89年から90年にかけてのツアー「89- 90人間なんて」は、吉田拓郎というアーティストの存在をまざまざと見せつけたコンサートだった。この10数年、ステージで歌ったことのない70年代初期の曲を、シーケンサーを使い、デジタルなサウンドにアレンジして聞かせたかと思うと、30分間、生ギター1本であれだけビート感の出せるボーカリストはいまだに見たことがない。元オフコースの松尾一彦と清水仁を加えたバンドは、ショー・アップされた演奏を聞かせ、最新アルバム『176.5』の曲も披露されていった。 そこには、音楽のジャンルや、曲のタイプや、楽器の進歩などさまざまな要素を呑み込んだ吉田拓郎 という一人のアーティストがいた。

「43歳になって全国ツアーやってるのなんて俺くらいだよ」 90年代へーーー。 客席には、20年分の青春があった。

(終)

別頁より引越

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