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2005/08/27

お喋り道楽 拓郎×松本隆④

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     時代が変わっても残る歌

拓郎 松本君はお酉は飲まないし、趣味は、本?

松本 本読んだり、歌舞伎観に行ったりしている。

拓郎 『微熱少年』っていう映画もやりましたけど、これから映画とかも作りますか?

松本  映画はちょっとね。

拓郎 小田和正が二作目にトライしているんだけど。

松本 やめたほうがいい。映画は映画で、みんな命懸けているからね。

拓郎  そうなんだよね。

松本  やるんだったら、こっちも命懸けでやんないと。

拓郎 そう、腹くくってやんなきゃいけないと思うよね。僕、映画に出演するだけでも大変だと思ったもの命懸けじゃない、みんな。あんなところにチャラかしで行くと失礼だと思うんで、もう二度と出ないと誓ったんですけどね。映画、作りますか、やっぱりいつ かは。

松本 どうしようもなくなったら作るかもしれないけど。

拓郎 今は小説で表現できると。

松本 小説もね、ここ数年、書けてない。

拓郎  書けてないというのは……?

松本  やっぱりね、韻文と散文てね,正反対なの。同じ言葉なんだけど 両方やるって 、 すごく難しくてね。だから詩を書きたいなと思ったら、小説はお預けだな。

拓郎  全然、世界が違うわけ?

松本  全然違う。簡単にいうと、詩っていうのは引き算なんですよ。いらない枝葉を全部 切っちゃって、幹と根だけにする。それがいい詩なの。小説は逆だね。

拓郎  なるほど。

松本 幹を作って、いっぱい葉っぱつけて、花を咲かせてね。小説は足し算。足し算と引 き算って、両立しないでしょ。

拓郎  なるほどね。かなり違うものなんだ。

松本  引き算は引き算でよさがあるからね。

拓郎  今の音楽についてはどう? いいたくなきゃいいんだけど、小室哲哉とか、あれ系の若い子のものがいっぱい出てきて、僕らの時代では想像もつかないくらいの枚数のアル バムが売れてるわけでさ。『風街ろまん』は何枚?

松本  あれ、想像で1万枚売れたって、喜んでいたよ。

拓郎  今はCD何百万枚っていう世界ですからね。そういう歌の世界を、言葉の世界から 見てて……。

松本  あれって、そんなに興味はないんだけど、要するに物の価値を数で評価するのはやめたほうがいいよ。

拓郎  数でね。

松本 何万枚売れたとかさ、いくら売れたっていうのは、意味ないと思うよ。それより残る歌をどのくらい作るか、そういう物差しではかるともっと厳選されると思う。

拓郎 今は厳選されてない?

松本 今の歌がね、何曲残るのか、分からないですよ。

拓郎  これから十年、歌い継がれるものかは。

松本 十年たってみないとね。だってはっぴいえんどがね、こんなに残るなんて全然思わ なかった。もう二十年以上たっているでしょ。

拓郎   そうですよね。

松本  二十年間、ろくに売れなかったものが残ってるっていうさ。

拓郎  これはすごいことだよね。

松本  これは価値があると思う。時代が変われば、枚数なんて意味がないよ。時代が変わっても残っているかどうかだよ。 

  終

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