この唄を君に贈ろう ( 1 )
番組は始まっているが拓郎と小室さんは雑談中・・・
拓郎、気づいて。
拓郎: 何の話してるんですか?今、ふっと我に返ったら番組が始まって
るじゃないですか。(笑)
小室: はははは。いや大丈夫。(笑)
拓郎: きょうは父の日?違いますよ。(笑)
僕はね、去年の暮れぐらいから自分でこう一念発起したというか
決めてる事があるんですよ。とにかく人前に出たら、よくしゃべ
るおじさんになってやろうと思ってます。ステージでむっとした
り、という事は恐らくないです今後。しゃべりまくるおじさんに
なりたいです。
小室: なんで?
拓郎: つまりずーっとこう、黙って曲なんかをやってるうちに、溜まっ
ちゃったですいろんな物が、僕の中に。
それは喋らなきゃね吐き出せない。
歌なんかじゃとても吐き出せない部分が、喋りの中にあるような
気がするんですよ。俺、それをやっぱりね、喋りたい。
小室: 何でも喋る?
拓郎: ええ、何でも喋ります、ええ?
小室: どんな話題でも?
拓郎: まぁ、ついていける話題なら。
小室: ふぅ~ん、最近の動きの中で、例えば熊本に行ったとかってのが
あるじゃない。そういう話も訊いてもいい?
拓郎: ????
小室: く、熊本じゃないか、鹿児島か。(笑)
拓郎: び、びっくりした。俺、熊本で馬食ったけど、そんな話してどう
すんだっていう。(笑)
あ、鹿児島ですか?はい、いいですよ。フィールド・オブ・ドリ
-ムスの旅。
小室: そうそうそう。
拓郎: よかったなぁー。映画、泣いたんだよね、本当に、俺。
小室: それはどこで泣いたの?
拓郎: うちで。もう涙、止まんなかったよぅ。ほいで、何だかわかんな
かったけどもうボロボロ。所謂もう、隠し泣きとかいうんじゃな
くて大っぴらにウワーッて泣いてるっていう。(笑)
小室: そうそうそう。あれはね、あれはね、ホテルのほら映画あるじゃ
ない。それでフィールド・オブ・ドリームスがあったの。
それで見たの。ホテルで1人でしょ、誰もいないでしょ、もうわ
んわん声をあげて泣くっていう感じで。
拓郎: うん、わかるなぁー。そいでそん時ね、俺の親父も何か俺に言い
残してる事があるんじゃないかっていう気が、ふっとしたんです
よ。それで、あのー、まさか野球場作れ、とは言わないだろうけ
どね。
小室: 自分が親父に言ってた事があるわけじゃない。
♪親父が一番だなんて~っていう歌、歌ってましたよね。
だから親父に向かって何か言ってたけど、親父から何か聞こうと
してなかったんですよね。
拓郎: それそれ、親父はね、言ってない俺に何も。よく考えてみたらね
一言もね、文句も言ってないし、ま、本当の事言ってないですよ。
で、言ってくれないから俺は恐らく憶測でいろんな事考えて、歌
にして親父を揶揄するっていうか、嫌な奴だっていう風にこう、
大きく脚色したりとかしてたわけですけども。向こうの言い分て
のは、そう言えば聞いてなかったなぁって思って。それがフィー
ルド・オブ・ドリームスの中にあったような気がしてさぁ・・・
俺にもあるんじゃないかなっていうんで、親父が仕事してた鹿児
島に行って、自分がガキの頃、鹿児島だったですから。
鹿児島の、子どもの頃家があった場所とかいろいろまわってね。
天の声、親父から・・「拓郎!」っていうのが、「そこに作れば
やってくる」とかいうのを、言うのかなって・・・まわったんで
すけどね、何にも言ってこないんですよ、うちの親父は。
小室: 全然、聞こえず?
拓郎: うん、あいつ天国で無口になっちゃったのかなぁ・・・
何にも言って来なかったですからね。
小室: 何年ぶりで行ったわけ?
拓郎: 約三十何年ぶり。
小室: 三十何年ぶりでもって、親父と共にいた場所は行ってわかった?
ああ、ここだって・・・
拓郎: わかんないですよ、あの、土地、何て言うんだろう、道、要する
に風景が全部変わってるからね。近代都市になってるわけだから。
もの凄く田舎だったですからね、ただ通ってた小学校がちゃんと
残っていて、で、あの、校舎とかも古いままあったりしてね、そ
れはすごく、「あぁ、ここだぁ」って、夏休みっていう歌、昔作
ったんですけど、その歌のできたのが、あそこの学校の事なんで
すけどね。
「ああ、ここだぁ」って思って・・・♪麦わら~、ってでません
でしたけどね。(笑)出れば俺もたいした男だなと思ったんです
けどね。(笑)
小室: ひゃひゃひゃひゃ~。
拓郎: 出なかったですね。失敗したな、俺も。「出たっ」って言えば良
かったね。(笑)今ね、俺ね、本当の事言っちゃって。
続く
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