この唄を君に贈ろう ( 4 )
小室: 何度儀礼的な墓参りをするよりも。
拓郎: うんうん、だから俺は多分、ま、これきっと年齢のなせる何と
かだって気がしてさ。あの~つまり二十歳代で俺はこういう事
は恐らくできなかっただろうし、思いもしなかったし。
三十でも、思ってなかったですからね。でまぁ墓参りしときゃ
いいじゃないか、っていう事だったんだけど。
きっとそういうのは、ある種、年齢でしょう。
小室: 俺も帰って墓参り行ってくる。
拓郎: いや、小室さんは絶対行ったほうがいいですね。あのぅ、墓参
りじゃなくっても、なんか・・・親父さん言いたい事あるよ、
キミには。キミだからこそ。
うん、俺がきみの親父だったら言うなぁ、いろんな事を。(笑)
うん、きみにだったらいろんな事、言っとかないとね。(笑)
おちおち死ねやしないんだから。(笑)
小室: 死んだんだよ。
拓郎: うん、だから死んだんでしょ。
小室: うん。
拓郎: だからきみを残してさぁ、死んじゃったって事は、そうとうい
ろんな事が溜まってるはずなんだよ。是非きみはね、行くべき
です。うん、いやもう本当に行きなさい。
小室: ほぅ・・・
拓郎: ね、いい子だから行きなさい。(笑)親父さん、どこに居た人
ですか?生前ちゅうか、生きてた頃。住んでる町とか、俺だっ
たら鹿児島だけど・・・言いたくないんですか?
小室: これは・・・あの・・・俺達の番組だからさ・・・あの・・・
拓郎: え?何、言ってんの?俺達の番組って。(笑)急に何、言って
んの?(笑)動揺したなぁ今、相当。(笑)
小室: ・・・親父・・すぐ傍にずっと住んでたんだ・・・
拓郎: 今、嫌~な言い方したなぁ。(笑)
小室: いやいや、だけど俺はすごく冷たかったんだ、親父に対して。
俺は・・・うん・・だからこの話をしたら俺は・・・
拓郎: うん。
小室: ・・・滅入って泣くよ・・・最後は。
拓郎: ふーん、いいんじゃないかな、きみの店だよ、ここは。
好きなようにしていいんじゃないの。
小室: (小さな声で)ふーん。
拓郎: 俺達が時間があるかないかは別にして、話、始めちゃったら?
小室: (もっと小さな声で考え込むように)ふー・・ん。
拓郎: いけるとこまで聞いてあげるからね。
(アシスタント二人に)適当に、帰りましょうね。
小室: (沈黙してしまう。)
拓郎: (間が持たず)あの人は、何メモしてるんですか?
小室: いろいろね、あのー、あんた番組の事なんにも知らないのに、
見事に番組を仕切ってる感じがするわ。
全員: はははは。
小室: あのメモはこれからやろうとする事に関係があるんだ。
拓郎: あぁ、関係がある人?
小室: 僕らの会話を、盗み聞きしている、お店のCIAなんだ。
拓郎: 「変な女」でしょう。
小室: そうなんだ。(笑)
拓郎: そういう女、いるんだよ。(笑)勘違いしてすぐメモるやつ。
小室: そうなんだ。それで、そのメモしたやつからアトランダムに
ピックアップして、つなげてしまって曲を作ろうっていう魂
胆なんだ。
拓郎: 彼が?
小室: きみがだよ。
拓郎: あははは。
続く
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