ビートルズが教えてくれた 拓郎×岡本おさみ対談③
◇日本の文化はテレ文化
吉田 今、キャロルっていうグループ 出てるけど、あいつら好きだね。言葉がさ、まず可愛い。ぼくは君をほほえみたいとか、ビートルズの歌詞がいっぱい出 てくるわけよ。英語がさ。その中に日本語もある。だからぼくはロンリネスとかさ。(笑)そんなの聴いてるとすごく楽 しい。理屈が全然ない。だからぼくは郷ひろみの、ぼくたち男の子、ゴーゴーっ てあの雰囲気は好きだね。理屈なし、雰 囲気だけでノセられるわけだよ。
岡本 でも、うん、そうかな。理屈が全然言葉から顔を出さなくっても、すごく中に理屈がある、そういう書き方はむずかしいんだけど。
吉田 中味があるのはむずかしい?
岡本 いつか電話で話した「ジョンの魂」 はさらっと読むと、まあ読みやすく、感覚的にもいいって感じでしょ。しかしあれは考えぬいて、とても理づめに考えこんできて、で表現方法としては理屈が感 じをこわすのをさけて、ひじょうにさらりと感覚的に仕上げてる。会話、話しかけてる手法でね。それはすごい巧みなテクニックだと思う。そういう高度な言葉 のテクニックで物を考えることをしないで、君たち女の子じゃあ、マンガになっ ちまう。
吉田 勿論、いい悪いじゃなくてさ.
岡本 うん。
吉田 ビートルズが例外なのはさ、ぼくはさびしいんだよ。君の髪の毛がどうのこうの。初期の歌詞にはそんな深みはない。ないけれど、まず雰囲気で、あるようにみせかけてしまう。つまり音楽の出し方だよね。ある雰囲気をかもし出しち ゃう。そこが好きだね。だから後半のビ ートルズは、ぼくはうけつけられない。コードがややこしくなったりコーラスがはいったり、雰囲気が変わっちゃつたのね。抱きしめたいなんか、当然変な詞だよ。どうでもいい詞だよ。それをピートルズがやると、どうでもいい詞でなくな つちゃう。シカゴなんか聴いていると、 この詞は真剣に考えなくちゃあって固さがある。だからそういう意味で今の奴らはあまり好きじゃない。まず理屈がありすぎるんじゃないかって気がする。
岡本 歌のことばと活字の詞とのちがいがあるとしたらさ、ともかく言葉を書くっていうことは、ぼくはものを考えるととだと思うからさ。だから活字の詞を書 くように考えた上で、歌の言葉として表現するとき、その考えたことはおくびに も出さないで、シンプルに消化できるかできないか。ぼくの場合はそのことかな。
吉田 ぼくはものすごくリズム&ブルー スが好きなわけ R&B。黒ん坊のそれがなぜ好きかって言うと、たとえば、 「朝起きるとベッドのまわりにブルース が歩いてた。パン食べようと思って割っ たらパンの中にブルースがつまってた! そういうのが最高の歌の詞だと思うけど さ。それだけさ。だけど音楽として成り 立たせる、なおかつ客をノセる音楽。それがすごく好きなのね。昔から、そういうのやりたくてしようがないんだ。
岡本 今の詩いいし、だけど書くのはずいぶんむずかしい。
吉田 郷ひろみ、おれ好きなんだね。あの雰囲気があるだけでも好きだね。
岡本 でもさ、それは作られた雰囲気じゃない。たとえば、その歌手が自分で歌いたいものだったらさ、でもまわりが作 ってる。はっきり作為がみえてるから、 ぼくには人形にしか見えないね。だから 自分が出したいことばなら別だけど。
吉田 話としてはすごく判る。ぼくもそ う思ってるわけさ。でもさ、じゃあなんでぼくが郷ひろみが気に入ってるかって いうと、それじゃあ例えばぼくが、あの雰囲気をつくれるかってことになると、 ぼくはできない。ああいう歌は自分で歌えない。歌詩ももちろん書けないと思う。ところがむこうの(外国)奴らは作って歌っちゃう。これは理屈ぬきでお客がのってくれる。楽しいんだから、そういうノセる歌い方をおれはするんだ、みたいなことが、じゃあ日本人の歌手にできるか。シンガー=ソング・ライターといわれる奴も、ぼくも、理屈ぬきで楽しい歌をつくってみたところで、それでお客をのせられるか。言葉でだけしかノセ られないわけよ。アクションを考えるなんてのはできない。外国の奴らはそれが できる。リズム&ブルースの連中は、やりたい、やりたい、だけでノッてるんだ から、客がね。そんな歌手が日本に何人居るかって気がするんだ。だからさ日本人がそういう人種だったとしたら、自分はできないっていうテレがあるんだ。テレテレテレ、日本人は大テレ人種だね。 昔からそう思ってる。日本の文化はテレ文化だと思ってるね。日本人ってテレまくってるんだよ。恥ずかしいんだよ。きっとさ。だからぼくはそれが作為だろう が何だろうが、しょうがないと思うね。 郷ひろみはタレントとして出来るわけよ。だけどその曲を創った奴はそれはできない。あとはお前やってくれ。もし創 った人がやって客がノッたらすごいと思うね。そこまでやらなけりゃあぽくらシンガー=ソング・ ライターっていってもだめだと思うね。だからさっき岡本ちゃんも歌えていったじゃないさ。創ってみて歌うとき、なにか渋ってるようじ やあね。だから歌う前に理屈を言う奴はダメだと思う。この歌はこうこうこうで、あんたたちには判ってもらえないと思うけど、なんていう奴がいるじゃな い。客に向かってさ。そういうのは最悪だと思うね。それじゃあシンガーソング・ライターなんて考えられないよ。 ぼくらでもさ、すごく楽しい歌創るわけ。 でもステージで歌うときには楽しくやれ ない。肩張っちゃって、かまえてるもの。 それが絶対おかしいと思うよ。そういう自分ってさ。
岡本 それはさ。弱味を見せたくないみ たいな、そういうことがあるんだね。
吉田 それはある。でも弱味だと思ってるからもう出来ない。弱味じゃないよ。 それで客がノセられたら、そんないいと とないじゃない。ぼくのものに「馬」って歌がある。おかしな歌なんだけど、そ れを歌って、客がうわーっと楽しんでノ ッてくれたらこんないいことはない。歌ってるぼくが、まじめな顔してるんじゃあ、逆にそういう自分がおかしいと思 う。そこまで責任もってやってないんだ なって気がするんだ。変ないい方だけ ど、自分で歌を創って自分で歌ってる奴 は、頭良すぎてなにもできない。すぐ考えちゃうから。思考が先に立って何もで きなくなっちゃう。泉谷しげるがステー ジで踊りまくってんの、テレかくしだと 思うよ。みんなええかっこしすぎるんだよ。
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