フォークソングの東京・聖地巡礼 1968-1985 金澤 信幸
フォークソングの東京・聖地巡礼 1968-1985 金澤 信幸
帯文より
そして、吉田拓郎である。拓郎は このコンサートの3ヵ月前に発売した「結婚しようよ」がヒット中であり、新しいファン、特に若い女性のファンを獲得していた。その反面、売れたことによる反発から批判の声も強く、この時期のコンサートでは「帰れコール」が常であった。それに対して拓郎は、 歌わずに帰ったり、1曲だけ歌って帰ったりしていた。この「音搦大歌合」(おとがらみだいうたあわせ)でも、会場のあちこちから「帰れコール」が鳴り響いていたが、拓郎は 「今日は帰りません」というようなことを言って歌い始めた。
何曲目かに、レコードはもちろん、ラジオでも聞いたことのない歌を歌い始めた。「旅の宿」である。「浴衣のきみは尾花の簪~」、その途端、会場から「それがどうした」「だからなんなんだ」といった怒声が発せられた。この拓郎のステージは終始、殺伐としたなかで進められたのだ。 (1972年4月22日、日本武道館「フォークの旗手は岡林から拓郎へ」より)
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